ポカよけの極意 第3回 飲食店のオーダー漏れ

先日とんかつ屋でランチを楽しもうと近所で評判のとんかつ屋に足を運びました。11時半を少し回ったあたりでまだお客さんは少なくカウンターは私だけ。テーブルも一組しか居ません。オーダーしたのはこの時期美味しいカキフライです。店員さんは私の「カキフライお願いします」の注文に大声で「はいカキフライ一丁!」と反応しました。ところが5分10分経っても私のカキフライは運ばれてきません。

12時近くになるとどんどんお客さんが入ってきて店はてんやわんやになっていきます。キョロキョロ店内を見渡したところ、私より後から入ってテーブルに座ったお客さんのカキフライはサーブされていました。これはオーダーが通ってないのだろうと確信した私は、たまたま通りがかったオーダーしたのとは別の店員さんに

「随分待っているが私のカキフライが一向に来ないんだが。」

と声を掛けました。その店員さんはすぐにオーダーを取った店員さんに確認し、二人は注文伝票が起票されてないことに気づいたようです。起票忘れした最初の店員さんはすぐさま別のお客様にサーブするはずだったカキフライを私にまわすことで対応しました。

そうしておいしくカキフライを頂いていたのですが、食べ終わるころになっても会計用伝票がやってきません。この店では注文がテーブルにすべて並ぶと必ず注文伝票を会計伝票としてテーブルに伏せて置くのがルールです。古いレジを使っているお店ではよくありますよね。私もとうとう食事を終え、そろそろ席を立つ頃合いなので再度先ほどの店員さんに、「伝票書いてもらってよいですか」と声を掛けて、会計用伝票を起票してもらい、それをレジに持って精算して店を出ました。しかしその数分前にカウンターの中の調理場では面白いことが起きていたのです。

カウンターの中にいる揚げ方の職人さんが、今オーダーが入っている注文伝票数枚をじっと見て、その後手元のフライの油きりのトレーと見比べながら首を傾げているのです。

そうです。私のオーダーを書き漏らした店員さんが、私の指摘を受けて別のお客様向けに揚げたカキフライを私に渡したけれども、その時点で新規の伝票を起票しなかったため、カキフライが一人前分ショートして調理場が進行していたのです。

この店ではこの時期カキフライは人気のメニューでで次々にオーダーが入ります。ですのでオーダーが続いている時には揚げ方さんはカキフライ1人前の伝票が足りていないことに気づきません。カキフライの調理が一段落した段階であれ?足りないぞ、となったのです。揚げ方さんは首を傾げながらカキフライを追加で揚げ始めました。


この事例でわかったポカは、店員さんが口頭で受けたオーダーの起票を忘れること。お客様の指摘を受けた段階でも起票しなかったこと。この2点でしょうか。ちなみにこの店は残念ながらこういうことがたまに起こるのは以前から通っていて知っていましたが今回私が対象となった次第です。

この店は紙伝票ですので、オーダーを聞く際にファミレスのようなオーダー端末はありません。お客様にお茶を運ぶ最中でも別のお客様、特に私の時のような一人客に「カキフライね」と声をかけられれば、すぐさま「カキフライいっちょう」とオーダーを歩きながら受けてしまいます。そのときすぐに伝票を起票できないタイミングでオーダーを取ってしまうことが多いので、そのうち何%かは起票忘れしてしまう構造です。

ではこのポカをどうポカよけすればよいでしょうか。

ポカよけとは、特に意識せずとも、ミスが置きない構造・仕組みにすることです。「今後はミスをしないように気をつけます!」ということはポカよけではありません。伝票を書き漏らさない仕組みをこの店で簡易に導入する=オーダー端末などを利用せずに業務フローやツールをいじることで達成することが出来ればOKです。

一番簡単なのは、お客様自身が注文伝票に起票することです。単価の安い寿司屋さんのテーブルにお好みのオーダーシートが有りますが、あれと同じです。お客様が起票して店員に渡すスタイルであれば起票漏れはあり得なくなります。もしくはラーメン店や立ち食いそば店でよくあるチケット販売機にしてしまうのです。これですと清算業務もなくなり省力化も実現できます。

しかしこのやり方は、その店が最初からそういうスタイルならば良いのでしょうが、これから導入するとなると新しくお客様の負担が増えるので、心情的に嫌がる方が多く出る恐れがあります。「前は自分で書かなかったのに、、、面倒だなあ」こう思われるのは得策ではありませんし、とんかつ店でそうしたスタイルのお店もあまりないので奇異に感じるでしょう。自動機械は廉価店のイメージもあるので、お店としても選びづらいかもしれません。

では次のやり方はどうでしょう。オーダーを起票するのは常にカウンター内にいるスタッフ(この店ではご飯を盛ったり洗いものするパートの方が居ます)に集約させるのです。配膳に歩いている店員さんが通りすがりでオーダーを口頭で受けたら

「◯◯さん(パートさん)、テーブル3番さんカキフライ2、とんかつ1!お願いしまーす」

と声を上げるのです。パートさんは「はいよ」とでも返事をすればよいでしょう。これでうまくいきそうですが、それでも忙しい時には、パートさんへの声掛けも忘れてしまう可能性があり、万全とまでは言えません。

ちなみに私が通う別の定食屋さんでは、通りすがりに声をかけてオーダーをしようとしても受け付けてくれません。

「順番にお聞きしますのでお待ち下さいね」

と言われてしまいます。その店では、着席してしばらくするとお茶・おしぼり・お新香の小皿・伝票の4点セットを店員さんが運んできます。お茶・おしぼり・お新香の小皿を置いた後に注文を聞いて伝票に起票してキッチンに持って行きます。このやり方はポカよけとして十分機能します。4点セットはキッチンとホールをつなぐカウンター脇にセットで準備されているので、持ち忘れもありません。通りすがりのオーダーを聞かないことだけ励行できれば万全です。
めったに通りすがりオーダーが無い店であれば、ついついオーダーを聞いてしまうかもしれませんが、この店は繁盛店で店員さんも忙しく対応しており、常連さんのみならず新規のお客様が毎日絶えることがありません。そのためこの店のこのルールを知らずに、例の「通りすがりのオーダー声掛け」も毎日発生していますので、新人のパートさんでもすぐこの対応を身につけることが出来ます。