放置は危険、運用業務も点検を

大手情報誌ビジネスを営んでいる企業で業務プロセスを構築する仕事についていた時のことです。ある部署の長に配属されてすぐさま配下の業務の点検を始めたところ、いくつかのトンデモ業務が発見されました。その一つをご紹介しましょう。

中古自動車広告サイトの広告写真の加工プロセスを点検していたとき、入稿されてきたJPEG画像をGIFに変換し、再度JPEGに保存し返す作業工程があったのです。画像ファイルに詳しい方にはアタリマエのことですが、GIFは256色のパレットしか持ちませんのでJPEGからGIFに変換すると画像の品質が著しく劣化します。JPEGに再変換しても失われた色情報は戻りません。すぐにその作業者に手順の変更を指示し、一体何故こんな作業をしているのか聞いたところ、前任者からそう引き継ぎを受けただけで理由はわからないとのことでした。

前任者はすでに退職しており経緯は定かではないですが、おそらくその中古車サイトの構築時(2000年ころだと思います)は、インターネット接続がまだまだ遅い時期でしたので、多くのサイトでGIF画像を利用して1ページあたりのファイルサイズを下げる努力をしていました。

おそらくはその頃に画像をGIFに変換してファイルサイズを圧縮する作業工程が設計されたもの、だんだんと年数が経った頃に、もうJPEGで大丈夫となったときに設計変更が行われ、単に変換作業を削除すればよかったのに、再変換して劣化したJPEGを入稿するというトンデモ業務設計に変わってしまったのだと思います。

これは前回にも述べた設計思想の継続というよりも、もう少しレイヤーを下げた「設計ノウハウ」や「ITリテラシー」に問題があったように思えます。

後日談になりますが、その中古車情報ビジネスのサイト運営担当から「稲葉さん、最近画像が綺麗になりましたね。何かされたんですか?」という質問が出たのですが、私はその時は曖昧に画像劣化を防ぐような加工プロセスに変更しました、とだけ伝えました。流石に本当のことはいえませんでした。