「危急時」を想定する3

では前回の危急時の一覧の中で発生確率と発生したときの影響度を5段階で評価します。どちらかが3以上を🟡、どちらかが4以上を🔴としています。

 

  1. 自然災害
  • 海外製造拠点の地震、台風、洪水などによる被害: 発生確率 2, 影響 3 🟡
  • 日本本社の地震、台風、洪水による被害: 発生確率 1, 影響 4 🔴
  • 主要営業所の地震、台風、洪水による被害: 発生確率 1, 影響 3 🟡
  1. 人為的な事故
  • 工場での火災、爆発事故: 発生確率 1, 影響 3 🟡
  • 重大な製品欠陥によるリコール: 発生確率 2, 影響 4 🔴
  • 輸送中の事故による製品損害: 発生確率 1, 影響 2
  1. 戦争や外交問題
  • 中日間の政治的緊張、戦争、経済制裁: 発生確率 1, 影響 2
  • 国際的な紛争による物流路の遮断: 発生確率 1, 影響 3 🟡
  • 中国による台湾侵攻: 発生確率 1, 影響 5 🔴
  1. パンデミック
  • 従業員の大量感染による業務停止や生産調整: 発生確率 3, 影響 4 🔴
  • ロックダウンによる業務停止や生産調整・生産停止・流通停止: 発生確率 3, 影響 5 🔴
  • ロックダウンによる販売低迷: 発生確率 3, 影響 4 🔴
  1. サイバー攻撃、データ漏洩、システムのダウンなどIT関連の問題
  • サイバー攻撃によるデータ漏洩: 発生確率 2, 影響 4 🔴
  • システムダウンによる生産・販売の停止: 発生確率 2, 影響 5 🔴
  • ランサムウェアによる業務停止: 発生確率 2, 影響 4 🔴
  1. ストライキなど人事・労働関連の問題
  • 労働争議による生産停止: 発生確率 2, 影響 3 🟡
  • 重要人物の急な退職、病気、死亡: 発生確率 1, 影響 2
  1. 法律・規制の変更
  • 製品規制の強化による販売停止: 発生確率 2, 影響 4 🔴
  • 環境法の変更による生産コストの増大: 発生確率 2, 影響 3 🟡
  • 営業停止命令や移転命令などでの生産の中断: 発生確率 1, 影響 4 🔴
  1. 経済危機、通貨の変動、市場の変動など経済的な問題
  • マクロ経済の悪化による販売減少: 発生確率 3, 影響 4 🔴
  • 通貨の急激な変動によるコスト増: 発生確率 2, 影響 3 🟡
  • 原材料価格の急激な上昇: 発生確率 2, 影響 4 🔴

このようになりました。あくまでも仮の状況設定ですので、このレーティングが正しいかどうかを深掘りはせずにこのまま進めましょう。

では今回は1.自然災害について検討することを例示します。

  • 災害予測
    • ハザードマップや天気予報などの予測の仕組みが整っていなければ災害が発生するまでわからないことがあります。その国その地域で災害予測がどこまでできているかによって、悪天候などでの対策の初動が変わってきます。
  • 脆弱性
    • 脆弱性とは、その地域や施設が自然災害に対してどれだけ弱いかを評価する指標です。建物やインフラの強度や立地、災害対応の準備度、地域の避難計画などが脆弱性に影響を与えます。
    • 製造拠点や営業拠点などの主要拠点の建物やインフラに対する脆弱性評価がなされていなければ、それをまず行います。特に海外においては日本の建築法で定められているような安全基準や安全係数が掛けられていない建造物ばかりです。
  • 被害予測と評価
    • 以下のように脆弱性に基づいて被害予測を行い、実際に評価します。チェックリストを作成すると良いでしょう。
    • 建屋の破壊:
      • 地震や竜巻・水害による建物の損傷・崩壊
    •  電源の喪失:
      • 嵐や台風による停電
      • 電線の倒壊や電柱の損傷による電源喪失
    •  機械の故障:
      • 地震や振動による機械の転倒・損傷
      • 水害による機械の故障
    •  通信の遮断:
      • 地震や台風による通信インフラの損傷
      • データ回線の切断
    •  原材料および在庫の損傷:
      • 洪水や台風による原材料や在庫品の浸水被害
      • 地震や振動による在庫品の崩壊
    •  人的被害:
      • 地震や竜巻による従業員の負傷・死亡
      • 嵐や台風による従業員の避難困難
    •  交通インフラの損傷:
      • 地震や洪水による道路や橋の損傷
      • 嵐や台風による交通インフラの遮断
    •  環境汚染:
      • 洪水や台風による有害物質の漏洩
      • 地震による地下のタンク漏れ

このようなことが起こり得ると考えて、被害軽減策、資金計画、行動プラン、復旧計画を予め作成するのがコンティンジェンシープランです。

  • 被害軽減策
    • 耐震工事・水害対策工事(バリアや嵩上げ工事)・耐火や消化設備の強化
    • 高所への避難路・避難所の整備
    • 電源バックアップの確保
    • 重要機器の冗長化(二重化など)や予備部品の確保
    • 部品や完成品置き場や倉庫の移動や床を高くする嵩上げ工事
    • 有害物質の保管倉庫やタンクの強化や流出した際のバリア設置
  • 資金計画
    • 保険の見直し。地震保険などを見直して、復旧にかかる資金調達を計画する
  • 行動プラン
    • 従業員の安否確認を行うための連絡体制を確立し、状況把握を進める(時刻: [時刻])者、環境管理者、人事部長など):
      • 行動プランを作成します。例えば中国工場の洪水による浸水被害を想定した場合、以下のような要素を決めていきます。
        • 対応責任者と序列(出社できない人がいることを想定して複数)を決定する。1.王工場長2.陳副工場長3.張製造部長など
        • 緊急対応チームのメンバー。王工場長・.陳副工場長・張製造部長・李ライン責任者・郭保安部長・林人事部長 など
        • 緊急対応チームの招集基準・招集する係・招集手段(通信途絶にも備えて)安全な司令場所の選定や準備
        • 洪水発生予測の手順
        • 洪水バリアや部材の移動、操業停止など、事前の被害軽減措置の計画と実行手順
        • 安全な場所からの洪水発生の確認の手順 外部カメラ等
        • 工場内での従業員への広報手段の確保。進行状況や被害状況を定期的に共有
        • 洪水による工場の被災状況確認・状況確認の手順 防犯カメラなど
        • 洪水の進行状況をリアルタイムで把握してアップデートする手順。何も変化がなくても30分毎にアップデートするなど。
        • 生産ラインの停止基準と実施手順。予測したら予防的に止めるのか、浸水がどこまで来たら止めるのか。
        • 原材料や完成品の保護措置と実施手順。予測したら予防的に止めるのか、浸水がどこまで来たら止めるのか。
        • 電源遮断などで機械を保護する手順と実施手順。予測したら予防的に止めるのか、浸水がどこまで来たら止めるのか。
        • 従業員の安全を確保するための通達とその運用手順と実施手順。予防的措置含めて。
        • 従業員(出社・自宅の両方)への避難指示を出す基準。避難経路と避難場所の指示。
        • 避難指示の解除や復旧作業の開始判断。