DX考1: デジタルトランスフォーメーションはどうあるべきか

デジタルトランスフォーメーション: Digital transformation; DT or DX[1])とは、(中略)「企業がテクノロジー(IT)を利用して事業の業績や対象範囲を根底から変化させる」[3]という意味合いで用いられる。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

さて、このようにいったんや定義されるDXだが、巷間で具体的に何を目的として何をどう変化させるか、何をゴールと置くのかについては多種多様な議論を聞く事が多い。

先日とある企業向け交流会で
「当社もFAX・紙伝票が添付メールになりつつある、電子化が進んでいる」というようなことや、
「当社はリモートワークでオンライン会議を今推進しており、DXが進み始めて・・・・」
というようなことを耳にしたが、さてこれはDXなのか、DXなのであればどういうDXなのだろうか。

「FAX伝票を電子メール化した」というのは、業務に必要な材料(リソース)が、紙からアナログ画像に変わっただけであり、業務自体は何も変わっていない。ことによると現場で添付ファイル画像を印刷しているかも知れない。

実際に大規模にそれが行われたのは、2020年のコロナでの緊急事態宣言のとき、国民全員への10万円給付の処理でのこと。当時は紙の申請書と電子申請が両方走っていて、市町村では、申請の確認~給付までの後続作業を一つにまとめるために、電子申請分を印刷して紙の申請とマージするという作業が行われていたらしい。

では「リモートワークでオンライン会議を推進している」というのはDXなのだろうか。実際のオンライン会議が画面上に出席者が動画や静止画、アバターなどで並んで発言しており、リアルの会議が画面上に引っ越しただけだ。パワポやエクセルの資料を参照しながら議論して結論を出すといったリアルの会議と同じことが画面に移行しただけのことだ。

これらを仮にDXと呼んでも別に構わないのだが、会議というものが何かの判断をする、意思決定をする場、とおけば、「企業の意思決定のDX」としてこれらを評価すべきだろう。

その上で、これら「添付メール」や「オンライン会議」は、情報のインプットメディアが紙から画面に変わったというだけの、一番表層のDXでしかないという評価になるだろう。

結論から書いてしまうと以下のようなレイヤーが考えられる。

情報のインプットメディアがアナログからデジタルに変わった ←イマココ
 ↓
情報それ自体がアナログからデジタルに変わった(ことで、範囲と粒度が向上し、統計的に分析可能になった、など)
 ↓
情報分析がアナログからデジタルに変わった(ことで、単に増えた減ったではなく、仮説検証、統計的な分析、t検定などが可能になった)
 ↓
意思決定作業や決定内容がアナログからデジタルに変わった(ことで、経営判断が経営環境に応じて動的に変化するような最適化が進んだ)

以上のように、「企業の意思決定のDX導入」という文脈であれば、経営判断~業務判断が最適化・高度化するのが意思決定におけるDX導入の目的であるべきだろう。