OJTで部下の成長を促すために役立つのが、GROWモデルと呼ばれるコーチング技法が有名です。GROWは、以下の4つの英単語の頭文字を取ったものです。
- G (Goal):目標設定
- R (Reality):現状把握
- O (Options):選択肢の検討
- W (Will):意思確認
GROWモデルは、質問を投げかけることで部下自身が考え、行動を促すコーチング技法です。OJTでは、指導者がGROWモデルに基づいて質問することで、部下が自発的に課題解決に取り組み、目標達成に導くことができます。
GROWモデルの具体的な使い方
1. 目標設定 (Goal)
具体的な目標を設定することで、部下が何を達成すべきかを明確にします。SMART(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Relevant:関連性のある、Time-bound:期限のある)の目標設定が効果的です
例:
- 今月の新規顧客獲得数10件達成
- 顧客満足度調査で5段階評価中4.5以上獲得
- クレーム件数を前月比50%削減
2. 現状把握 (Reality)
目標達成に向けた現状を把握することで、課題や問題点を明確にします。部下自身の意見や考えを聞き出すことで、主体的な問題解決を促します。
例:
- 新規顧客獲得のためにどのような営業活動をしているか
- 顧客満足度を向上させるためにどのような工夫をしているか
- クレーム発生原因は何と考えられるか
3. 選択肢の検討 (Options)
目標達成のために考えられる選択肢をできるだけ多く挙げます。部下自身がアイデアを出すことで、創造性や問題解決能力を向上させることができます。
例:
- 新規顧客獲得のために、SNS広告を活用する
- 顧客満足度向上のため、アフターサービスを充実させる
- クレーム発生防止のため、顧客対応マニュアルを改定する
4. 意思確認 (Will)
選択肢の中から、部下が実行する意思のあるものを選択します。行動計画を具体的に立て、実行に向けてコミットメントを高めます。
例:
- 週に3回、SNSで新規顧客向けの情報発信を行う
- 顧客満足度調査の結果を分析し、改善策を実行する
- 顧客対応マニュアルを改定し、全社員に周知徹底する
GROWモデルのメリットは部下の主体性を引き出す問題解決能力を向上させ、モチベーションを高めるコミュニケーションを促進する ことでしょう。
そしてDEPATモデルは、私が提唱するOJTトレーニングプロセスです。Demonstrate(示す)、Explain(説明する)、Practice(実践させる)、Assess(評価する)、Teach(教えさせる)の5つのステップから成り立っています。座学で一定の知識を得たあとにOJTに移ります。そこで先程の5つのステップで育成します。この手法は、単に知識を頭で理解するだけでなく、実際に体験し、最後に自らアウトプットする、例えば他人に教えることで完成します。得た知識をアウトプットすることで深い理解と長期記憶につながるという原理に基づいています。
実際の適用例として、コールセンターのOJTでは、新人は最初にトレーナーの作業を観察し、その後、トレーナーからの詳細な解説を受けます。安全な環境のもとで実際に作業を経験し、フィードバックを通じて練習を重ね、最終的には新たなトレーナーとして自分が学んだことを他人に教える機会を持ちます。実際にトレーナーをやらなくても言葉と動作でアウトプットすることでも代替できます。アウトプットする行為が重要なのです。
ステップ |
目的 |
活動内容 |
評価基準 |
---|---|---|---|
Demonstrate (示す) | 新人が業務の流れと基本的な対応を理解する。 | トレーナーが標準的な顧客対応を模擬し、良い例と悪い例を示す。 | 新人が業務の流れを説明できるか。 |
Explain (説明する) | 新人に業務の詳細と対応方法の理由を理解させる。 | トレーナーが対応スクリプトの使用方法、顧客とのコミュニケーション技術を詳細に説明する。 | 新人が対応の理由と方法を正確に説明できるか。 |
Practice (実践させる) | 新人に実際の業務を体験させ、スキルを向上させる。 | 新人が実際の電話対応を行い、ロールプレイやシミュレーションを通じて練習する。 | 新人がスクリプトを適切に使用し、顧客対応ができるか。 |
Assess (評価する) | 新人のスキルレベルと理解度を評価し、フィードバックを提供する。 | トレーナーが新人の電話対応を評価し、具体的なフィードバックを提供する。 | 新人が提供したサービスの質、顧客対応の改善点。 |
Teach (教えさせる) | 新人に知識を整理させ、深い理解を促す。同時に、新人の自信を高める。 | 新人に他の新入社員や同僚に対して学んだ内容を教える機会を提供する。 | 新人が他者に知識を正確に伝えることができるか。自信を持って教えることができるか。 |
このプロセスを通じて、新人は迅速に戦力化され、知識の定着とスキルの向上が図られます。DEPATは、最強のOJT教育法です。これに基づいて新人の育成計画を経てましょう。